171話の斎王琢磨とタロットについての考察

171話終盤において、死神の巡遊の効果により斎王が墓地に送った13枚のカード THEMIGICIAN、エース・オブ・ソード、ネクロサクリファイス、THEEMPEROR、運命の介在、THEDVIL、THEWORLD、幻視、法皇の錫杖、来世のヴィジョン、アルカナティックデスサイス、スートオブソードⅩ、THEMOON、これらについてタロット象徴辞典(井上教子著)を引用しつつ考えてみたいと思います。
個人の推察であり不明部分も多いですが、何となくアルカナたちについて興味を持っていただけたら嬉しいなと思います。

THEMIGICIAN
大アルカナの魔術師、作中のデュエルでは度々登場していた。
『人のクリエイティブな力が暗示されているのがこのアルカナです。創造とは「そこに存在しないものを、新たに初めて作り出すこと」創造者とは先駆者、開拓者でもあるのです』
『魔術師は、今こそ四大の精霊を操り己のために変化を起こす術を開始しようとしています。人智を超えた大いなる想像力に導かれ、可能性の限りを尽くして人間の限界に挑戦しようという所です』
『私達を生み出した壮大な宇宙意識との交感により時空を超え、過去や未来のヴィジョンを呼び覚ます事ができる力、実体を見通す力、不可視を可視にする高次なる想像力が魔術師に描かれているのです』
……破滅の光との出会い、新たなる世界の創造を破滅の光から提示され斎王がそれを受け入れたことを表しているように思われる。

エース・オブ・ソード
小アルカナ、剣のACE。作中のデュエルでは度々登場していた。
『物事の流れが人間の情を介さない淡々としたものになってくる事が伺えます。「剣」という裁きの道具が示す変化は、ある人にとっては断罪されるかのように厳しく心痛を覚えるような事態でもありえます』
『この札が出ている時点で通用するのは機械的な価値判断であり、人間の温情に期待していた人にとっては思わぬ展開になるでしょう。新しい思想、世相、流行が登場する可能性もあります』
『一個人の生き様、人と人との戦いの様相、具体的な思考そのものを表す札です。動かしがたい確固たるエネルギーが満ちており、その強さのあまりに生じる破壊的な作用を読み取る事もあるでしょう』 『指針として解釈するなら「情けは無用」人知の力があなたを導きます。アルカナ「魔術師」が心に抱く思想、企画、計画を具現化したものがこの札です。この剣は未来を切り開く道具なのです。時に痛みを伴う進展であっても当事者に必要な神からのギフトであると解釈したい所です』
『逆位置の解釈は正位置と同様ですが、結果として波乱、闘争、破滅を導く人の言動、思想的なエネルギーが暗示されていると言えるでしょう』
……破滅の光に導かれるまま世界の破滅に向かって突き進んでいくさまを表している?

ネクロサクリファイス
該当アルカナは無し、自分の墓地にあるモンスターを相手の場に召喚する事で自身の上級モンスター召喚への生贄とするカード。
……妹である美寿知が魂をデジタル化することでこの世を離れた、それによって斎王が一層破滅の意思に染まることを暗示してる?ような気がするが不明。

THEEMPEROR
大アルカナの皇帝、作中のデュエルで幾度となく斎王に用いられているモンスターであり、タロットではオージーン王子を示すカードとして登場している。
『皇帝は、支配者の札です』『この札が出たのなら、あなたが主導で物事を推し進めていく必要があります。湧き上がるエネルギーと野心があなたの唯一の導き手なのです』『綺麗事ではなし得ない、戦い勝ち取れと札は物語っているのです』
……オージーン王子からソーラを奪い事実上の支配者になったことを示していると思われる。

運命の介在
該当アルカナは無し、斎王対オージーン戦で使われた手札からの魔法発動を可能にするカード。
……不明だが斎王の意思が二つに分かれ、その間に運命の鍵が握られたことを示しているように思われる。

THEDVIL
大アルカナの悪魔、正位置で「悪事、不正、誘惑、束縛」を意味するとされ、作中ではモンスターカードとしてだけではなく少年期に斎王が占った自身の運命、未来において導きだされた答えである「破滅」 その後、光に魅入られ世界を破滅に導こうとする斎王自身をも象徴するカードとしても登場している。
『悪魔とは、手段を選ばない存在であることの現れです』『本来人が関わるべきでない闇の世界が一面に広がった、悪徳の元凶がここにあるという構図です』『物欲と快楽に溺れ、世を騒がれてきた犯罪者、独裁者が存在します。彼らは決して特別なのではなく、悪魔と手を結ぶチャンスがあっただけなのです』『悪魔は、人が生まれ持っている悪性に支配されるという札です』『道徳性を失い堕ちた人間の非道、不条理な事柄がテーマになります』
……度々地上に降り注ぎ、凶悪犯罪や戦争を引き起こしてきた破滅の光、その波動を浴び破滅へと突き進んだ斎王やDDのことを示しているように思われる。

THEWORLD
大アルカナの世界、作中ではタロットとして出ることは無かったが二期において斎王のモンスターとして上記のデビルと共に二期終盤の決闘で登場していた。
『状態として解釈するなら、事態には何ら支障なく、関わる誰にとっても最善の状態であること。行く手を阻むものは何もなく、行ける所まで行くだけ、という環境が貴方の眼前に開かれているでしょう。何も欠けていないこと、足りないものは何もないこと、必要な要素は全て揃っていると伝えて出る札なのです。道徳的な秩序や法的な安全が物語られているのではありません。そんなものに頼らずとも、あなたさえ動き出せば世界を一つにすることはできるだろうと、札はメッセージを送っているのです』
……二期の決着、破滅の運命を退けた場面を示していると思われる。

幻視
該当アルカナは無し、万丈目対斎王戦で使用された魔法カード。
……不明だが時系列的に158話の啓示を示している?

法皇の錫杖
大アルカナの法皇、相手にドローを許す代わりに自分の場のカードを相手の魔法・罠・モンスターの効果による破壊から守る罠カード。作中では十代 VS 斎王戦で光の結界を守るために使用された。
またタロットとしては斎王の未来にとって正位置の法皇「救い、アドバイス、役に立つ人物」として示された彼の親友、エドを象徴するカードでもある。
『法王とは、単に善良なる社会の導き手であるだけではないのです。天国と地獄という死後の世界、肉眼では感知できない不可視の領域にもその領分が及んでおり尚且つ現実社会の地に足を付けている存在、それが法王なのです』
『ウェイト版では、「悪魔」に法王とは反対のポーズをとる悪魔がみられるのが大変興味深い点です。法衣を剥ぎ取り、獣性が剥き出しになった教祖に快楽へ溺れた男女が従うような悪魔をここで確認しておくのもよいでしょう』
『ウェイト版の法王は赤い法衣を纏っています。』『キリスト教における赤は、十字架に磔にされ血を流したイエスの痛みを人々に知らしめるようにすることに由来し、殉教、受難を示す色なのです』
『人や物事が健全な状態であることで、事態は穏やかに安定し常識的に進行してゆくでしょう。人と人とのやり取りの中で慈愛の精神が育まれること、穏和で温かい交流があることなども示すように』
『指針として解釈するなら「穏やかに、合法的に、道徳的に」慈悲の精神で人を導き教え諭してゆく必要もあるでしょう。慈悲とは、仏教用語でありそもそも他人の悲しみに寄り添う精神性を言います。苦しみや悩みごと、重荷を抱えている他人を思いやる懐も求められることでしょう』『逆位置になると、不道徳で秩序が乱れてきます。常識を逸脱し出すぎた行為をしている場合もあるでしょう』
『不当な出来事に巻き込まれたり、不正行為をしたりされたりということに注意が必要です』
……165、166話の出来事を示している?エドが陥れられ姿を消したことが斎王の運命に何某かの影響を与えたと見るべきか。

来世のヴィジョン
該当アルカナは無し、このカードが使用された73話では相手のデッキをめくり次に来るカードを知る効果を未来視の能力と重ねるような描写があった。
……美寿知が捕らえられたことで完全に未来を予知する術を失った?と思われるが不明。

アルカナティックデスサイス
元のカードに描かれているアルカナフォースはTHEDVIL(悪魔)だが上で既に悪魔は出ているのと、決闘中に死神の巡遊が使われていること等から此処でのこのカードは大アルカナの死神を担当しているということにしてみる。作中では二期の十代対斎王戦で使用された。
『このアルカナは死と生誕、言い換えれば再生の象徴でもあるのです』『ウェイト版の「死神」には、五芒星が逆さまになった逆五芒星の形で描かれていることに注目しましょう』
『逆五芒星は未完成の人間の象徴。不完全に終わった作業、完成に至らぬ小宇宙を示すものだと言えるでしょう』
『この札が示すのは静かなる引き際です。当事者には身を切られるような辛さが伴うでしょうが、淡々と受け止める以外に為す術はなくある種の潔さをもって、いつもと同じ朝を迎えるようにその変化を受け止める事でしょう。自ら身を引く、物事が自然消滅する場合もあり、過ぎ去るのを静かに待つことしか出来ないかもしれません。静寂の中でそれまでのことが白紙に戻るでしょう』
『状態としては、実りなき不毛の時期、死滅状態を示して出ます』『電気もガスもない古代人にとって、凍てつく冬とはいかばかりのものだったでしょう。暗い吹雪が数日も続けば肩を寄せ合い少しでも体力を保持するために、じっと生命活動を休止させることしかなかったでしょう』『恐るべき冬、冥府の神が命を奪い取りにきていることを示してこのアルカナは出るのです』
『死、不毛という概念から「無」を象徴して出ることもあります。当事者の行為に全く意味がない事を示してこの札が出ることもあります。物事は白紙に戻り、無、ゼロの状態にあって当事者もまた無力、無気力に陥ります。死と生誕のサイクルとは、一個人が左右できることでもありません』『指針として解釈するなら「潔く」死を受け入れる覚悟を決めることがまず求められます。自ら執着心を断ち切ることは容易くありませんが、断腸の思いでもそうすべしとこの札は促して出るのです。過去の積み重ねさえも白紙に戻すという大胆さが必要になることもあります。人間の温かい情を捨て、非情な手段を取ることを促して出ることもあります』『そうして全てをなきものとする覚悟が出来たら、ゼロから新しい一歩を踏み出しましょう』
『全か無か、という極端な選択を迫られる時にも出ます。失うもの、消滅してゆくものがあることを受け入れ、それを振り返ることなく前進してゆくことが大切なのです』
『逆位置になると刷新力が発揮されません。物事を白紙に戻しゼロから仕切りなおすことが出来ないまま、白馬に身を任せ御者を失った馬が彷徨い歩くままに時間だけを費やすでしょう。「生きている」という実感を失い、ただ生ける屍の様に生命力を発揮できない状態です。過去を引きずっていたり過去の思い出のみに生き、そこから抜け出せず堂々巡りに陥ることもあるでしょう。人生そのものが停滞するような、致命的な時期を迎えることになります』『この悪循環から脱したければ、決死の覚悟が必要です。その覚悟があれば、そして潔く振る舞うことが出来れば問題は克服できるでしょう。真剣に自分の「生」に向き合えた時に、未来は開けてくるのです』
……次のカードが剣の10であることを考えると無力感と焦燥に苛まれるなか美寿知を奪われたことで力への欲望に取り憑かれ無意味な決闘に臨もうとしていることを示しているのでは無いか。

スートオブソードⅩ
小アルカナ、剣の10。作中では正逆によって相手か自分の場のモンスターを全て破壊する魔法カードであり、過去の決闘においても度々用いられていた。
『この札は、めった刺しにされ命尽きた段階です』『鋭い剣であるが故に、自分自身を傷つけて終わる結果になるという「完全な敗北」を示す札なのです。こうなるからには、他者を傷つける言動を当事者自身がとっていた可能性があります。あるいは、自爆行為とも言える無謀な挑戦を自らに課したのでしょう。「痛み、苦しみ、悲壮感」を伴う札は他にも存在しますが、その中で最も激しい心痛と、それを招いたのは当事者自身であることを告げて出る札です。当事者が打ちのめされるような肉体的、精神的苦痛を表す札です。第十段階は飽和の状態でもあります。極限の状態、これ以上はないというほどの辛さ最も望まぬ出来事を招くことが予想されます。逃げ場はなく、誰の助けも得られないでしょう』
『また、10の札に共通する個人の域を超えたできごと、集団、地域社会について物語って出るという働きも忘れてはなりません。社会的な極限状態と解釈した場合、当事者ばかりに責任があるわけではないケースを示すことになります』
……170、171話の決闘とその結末を示している。

THEMOON
大アルカナの月、作中では世界と同様にタロットしては表れず二期終盤に斎王のモンスターとして登場した。
『月が放つ光は、太陽が沈んだ地上でキラキラと音を発するかのように瞬く星明りに感じる希望とは対照的に、人間の不安や恐怖を駆り立てるもの』
『古来より、私達の深層心理、無意識の世界を司るもの、人を狂気に陥れたり、隠れた獣性を明らかにするものとして扱われてきたのです』
『暗闇は、太古の人が魔物とみなし恐れたものです』『これは、死や死後の世界についての不安や恐れ、私達が心の中で味わう得体のしれないものに対する寒々しい感情を表した絵柄だと言えるでしょう』『水辺は、海や水と同様に女性性、流動性の象徴であり、深い池や深海は人の深層心理の象徴でもあります。さざ波は、微妙な人の心の揺れを暗示して描かれるもの。肉体が一切の活動を停止している時、深い眠りについている時にも、意識の部分は活動し夢を生み出し続けています。意識のみが紡ぎだす現象、その影響力や力の大きさを思い知らされるアルカナです』『満ち欠けする月のように移ろいやすく不安定な人間の心。本人さえも知りえない深層心理がテーマであり、誰もが人に言えない秘密や問題を抱え、いつか狂気に陥るかもしれません。問題を解決することではなく問題とどう付き合っていくかが裏のテーマなのです』
『指針として解釈するなら「不可視の世界が鍵である」』『目に見える氷山の一角を全てと捉えるのではなく、海の底の真実を見極めようとするべきだと告げてこの札は出るのです』 『問題となっている事柄には当事者自身の深層心理が大きく影響している場合もあるでしょう。壁にぶつかったら、それは自らの心が生み出しているものではないかと立ち止まることが時には重要です。あるいは、解決しようがない問題というのも中にはあるでしょう。そんな時にはその問題とどう付き合っていくかが問題となり当事者の強い心が求められます』
『またこの札は、現状位置を見定めよと告げて出る場合もあります。物事を解決させたい、晴れやかな気持ちになりたいと強く願うことは結構ですが、朧げな月光の下で一体何が見え、何を明確に打ち出すことができるでしょう。見えにくい所で騙されることに甘んじているのは、当事者の現実逃避を望む深層心理のなせる技。自分が今現在どこにいて、どこに向かおうとしているのか客観的に知ること、そして慎重に動く必要性を自覚しましょう』
『逆位置になると、当事者が味わう不安と恐怖、その真実の姿に気づきだします。それに事実はなく、当事者が生み出しているものである時にこの札が逆位置で出ます』
『次第に周囲が明るくなり、不透明感が徐々に薄れ、明るい兆しが見えてくることが期待できます。徒に怯え打ち震える必要はなくなり、安堵感を覚えるでしょう。それは母親が与えてくれる自然な安らぎ、家庭という自分の巣で味わう安心感と同じものです。身近な人、血縁関係者の温かい心に触れて守られている感覚を知るのかもしれません。ただし、この札が出ている限り、不安定で移ろいやすい状況下にあることは正位置と変わりません。月の逆位置は決して太陽ではない事を忘れないでください』
……月はダークネスの象徴なので、斎王が敗れダークネスに取り込まれることを示している。

大分ざっくりと且つ恣意的に意味を抜き出してしまってはいますが、上の13枚が二期及び四期の流れというか何となく斎王の辿った道筋を示してるように思えたので纏めてみました。
(療養中に「運命の輪」は戻ってきていましたが)斎王の元からタロットは失われているのでアルカナフォースたちが斎王の末路を示したということでいいんでしょうか、本人は認識もしませんでしたが。
見方によっては未来を見通す能力を失ってもなお彼は運命の奴隷だったと捉えることが出来てしまうのが辛いところ。
158話の啓示のような過去に持ち得ていた異能の断片が今も残っている、というのは斎王にとって幸せなのか不幸なのかは分かりませんが興味深い事象ではあります。

Page Top